大理石の地下神殿,という見出しなら「そうなんだ」と思うだろう。
しかしこれは、大理石ではない。岩塩を掘り出したあとの地下空間だ。ルーマニアにはこうした岩塩坑が数多くあり、観光スポットとして開放されている。
さて、塩が形成され岩となって集積するための時間を計算してもらいたい。
写真の岩肌に地層のような模様があるが、これは太陽の熱射で塩が乾いた跡だろうか。まるで木肌の年輪を彷彿とさせる景観。木肌の年輪は1年ごとに刻まれるが、岩塩となるとそうはいくまい。数千年に1本とか、おそろしく悠久の時間を要するだろう。
そして映り込んでいる人の背丈から、坑道のスケールを想像してほしい。これだけ積み重なるのに、何億年かかるだろうか。
地球という星の営みは、気が遠くなるほどゆるやかで壮大だ。それに比べれば、人間の時間軸は気ぜわしい。西暦なるものはたかだか2000年ちょっとしか経験していない。こんなわずかな営みの中で、科学だ技術だ政権だとうぬぼれている。